胸に関する症状や違和感があるとき、「これは何の病気かもしれない?」と不安になる方も多くいらっしゃいます。
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道では、乳腺専門医が豊富な経験と女性の視点から丁寧に診療を行っております。
こちらのページでは、当院で対応している主な乳腺疾患について、症状の特徴や治療方針などをわかりやすくご紹介いたします。
乳房に気になる症状がある方は、自己判断せず、できるだけ早めに当院までご相談ください。
乳がん
乳がんは、乳腺にできる悪性腫瘍で、女性のがんの中でも最も多く、年々増加傾向にあります。乳房にしこりができる、皮膚がひきつれる、乳頭から血の混じった分泌物が出るなどの症状があり、無症状で進行することも少なくありません。定期的な検診や自己チェックにより、早期発見することで治療の選択肢も広がります。
治療法は、がんの進行度や性質に応じて、手術、放射線治療、ホルモン療法、化学療法などを組み合わせて行います。
パジェット病
パジェット病は乳がんの一種で、乳頭や乳輪の皮膚に湿疹のような変化が現れるタイプのがんです。赤み、ただれ、かさつきなどが特徴で、乳頭湿疹や皮膚炎と誤認されることもありますが、治療をしてもなかなか改善しない場合にはパジェット病の可能性を考える必要があります。
発症している乳管内に乳がんを伴うケースも多く、皮膚症状だけでなく、乳房の内部を評価する画像検査や生検が重要になります。早期であれば限局的な治療で済むこともあるため、「乳頭の湿疹がなかなか治らない」と感じたときは、自己判断せず受診してください。
乳腺症
乳腺症とは、乳腺の組織がホルモンの影響を受けて変化し、乳房に痛みや張り、しこりのような感触が現れる良性の疾患です。30代から50代の女性に多くみられ、特に月経前になると症状が強くなるのが特徴です。片側だけに現れることもありますが、両側に症状が出る方も少なくありません。症状はホルモンの周期と連動して変化するのが特徴で、通常は経過観察で問題ありませんが、症状が強い場合にはホルモンバランスを調整する治療を検討することもあります。
乳がんとの違いがわからず不安になる方も多いですが、乳腺症自体はがんとは異なる良性の変化です。ただし、乳腺症と乳がんは症状が似ていることがあるため、自己判断ではなく、乳腺専門医による検査・診察を受けることが重要です。
乳腺線維腺腫
乳腺線維腺腫は、特に10代後半から30代の若い年代で出現しますが、自然に消失することはないため、すべての年代層で観察される良性の腫瘍です。乳房にふれるしこりが気になって受診された方の中で比較的多く診断される病変であり、しこりは弾力があり、丸く、触れるところころと動くのが特徴です。
一般的には痛みを伴わず、数センチ程度の大きさで見つかることが多いですが、女性ホルモンの影響を受けて大きくなる場合もあります。基本的には良性であり、がん化するリスクは非常に低いため、特に症状がなければ定期的に乳腺エコーなどで経過を観察することで十分ですが、大きくなる傾向がある場合や、腫瘍による痛みなど症状が強い場合、不安が強い場合には摘出を検討することもあります。
乳腺炎
乳腺炎とは、乳腺に炎症が起こる病気で、特に授乳中の女性に多く見られます。母乳の通り道である乳管に母乳が滞ったり、細菌が入り込んだりすることが原因で発症し、乳房が赤く腫れて強い痛みや熱感を伴うことがあります。発熱や寒気など、全身症状を伴うこともあります。発症の初期には、母乳の排出を促すケアや冷却で改善することもありますが、炎症が進行すると、抗生物質による治療が必要になります。さらに炎症が悪化して膿がたまってしまった場合には、膿を排出するための切開や吸引といった外科的処置が必要になることもあります。
授乳を続けながら治療することができるケースも多いため、痛みや腫れを感じた際には無理に我慢せず、できるだけ早く受診することが大切です。
授乳中以外にも乳輪下膿瘍からの炎症の波及や、肉芽腫性乳腺炎など特殊な乳腺炎を発症する場合があり、それぞれの病態に即した治療を行うことが大切です。
乳輪下膿瘍
陥没乳頭の方、喫煙習慣のある方、免疫力の低下が起きる基礎疾患がある方など、乳頭直下に感染や炎症を起こし、膿のたまり(膿瘍)を形成することがあります。これを乳輪下膿瘍と言います。早い段階であれば抗生物質などの薬物療法で改善しますが、炎症が波及すると乳腺炎などを合併し、膿の量が多い場合は穿刺吸引や切開による排膿が必要になることもあります。
乳頭直下の痛みや腫れ赤みにお気づきに場合は早めに受診することが大切です。また症状は繰り返すこともあり、禁煙や乳頭のケアなどで再発予防を行うことも大切です。
肉芽腫性乳腺炎
硬いしこりを形成し再発を繰り返す乳腺炎を肉芽腫性乳腺炎といいます。
授乳期以外に発症する乳腺炎で明確な原因は不明ですが、経口避妊薬の服用や自己免疫疾患などとの関連性も指摘されています。
皮膚からの膿の排膿や潰瘍を形成することもあり、治療はステロイド剤などの内服治療を行うことが多いですが、内服治療で効果が不十分な場合は膿瘍の除去などの外科手術が必要となる場合があります。
乳管内乳頭腫
乳管内乳頭腫は、乳頭へとつながる乳管の内部に発生する良性の腫瘍で、特に閉経前後の女性に多く見られます。症状としては、片側の乳頭から分泌物が出ることが多く、分泌物に血が混じることもあります。しこりとしては触れにくいこともあるため、突然の分泌物に不安を感じて受診されるケースがよくあります。
乳頭からの血性分泌は乳がんとの関連を心配される方も多い症状ですが、乳管内乳頭腫は悪性ではなく、早期に発見し適切に対応すれば心配のない疾患です。診断には乳腺超音波検査や乳管造影、必要に応じて細胞診やMRIなどを用い、腫瘍の位置や性質を確認します。治療としては、腫瘍を切除する手術が選択されることが多く、通常は日帰りでの対応も可能です。血性の分泌物がある場合は、たとえ痛みやしこりがなくても、乳がんなどの可能性を否定するためにも、早めに診察を受けることが重要です。
乳管拡張症
乳管拡張症は、乳頭へつながる乳管が広がり、内部に古い分泌物や炎症性物質がたまることで、乳頭からの分泌や軽い痛みが現れる良性の乳腺疾患です。特に閉経後の女性に多く、黄色や茶色、緑色の分泌液が片側の乳頭から出ることで気づかれることがあります。明確なしこりが触れない場合も多く、不快感や圧痛を感じる程度で済むこともあります。多くは経過観察で問題ありませんが、症状が長引く場合や炎症を伴う場合は、抗生物質による治療がとなることもあります。再発を繰り返すときは、乳管の一部を切除する手術を行うこともあります。
分泌があると乳がんを心配される方もいらっしゃいますが、乳管拡張症は基本的に良性で、きちんと検査を受けることで安心につながります。
高プロラクチン血症
高プロラクチン血症は、乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンの値が通常より高くなることで、授乳期以外でも乳頭から白い分泌液が出たり、月経不順や無月経、不妊といった症状が現れる状態です。
原因としては、脳下垂体にできる良性腫瘍(プロラクチノーマ)や、一部の薬の副作用が考えられます。治療には内服薬によるホルモンの調整や原因薬の見直しなどを行います。
乳頭湿疹
乳頭湿疹は、乳頭や乳輪の皮膚にかゆみや赤み、皮むけなどの炎症症状が現れる状態で、接触性皮膚炎や湿疹などが原因として多く見られます。下着や洗剤、汗などの刺激が関係していることもあり、左右両側に症状が出ることが一般的です。皮膚科的な治療で改善するケースが多いですが、症状が長引いたり、片側だけに現れる場合には注意が必要です。特に治療をしても改善しない場合は、乳がんの一種であるパジェット病との鑑別が必要となるため、乳腺専門医による診察を受けることが重要です。
リンパ節腫脹
リンパ節腫脹とは、感染や炎症、ワクチン接種などの刺激により、体の免疫反応として一時的にリンパ節が腫れる状態を指します。脇の下にしこりや違和感を感じて来院される方の中には、このリンパ節の反応によるものが多くみられます。通常は痛みがなく、時間とともに自然に小さくなっていくことがほとんどですが、腫れが長期間続く場合や乳房の症状と同時に出ている場合は、乳腺の疾患やまれに血液の病気が関係していることもあります。
当院では、触診やエコー検査などを通じて、腫れの性質や背景にある原因を丁寧に見極め、必要に応じて追加検査をご案内いたします。
副乳(ふくにゅう)
副乳とは、脇の下など乳房とは別の部位に見られる乳腺組織の名残で、生まれつき存在することが多い良性の状態です。通常は目立ちませんが、思春期や妊娠・授乳期などホルモンの影響を受けやすい時期に腫れたり、しこりのように触れるようになることで気づかれることがあります。脇の下に柔らかい膨らみを感じる、左右差が気になるといったお悩みで受診される方も少なくありません。
また、副乳による脇の下の神経や血管リンパ管の圧迫により腕のだるさやしびれが起きることもありますが、圧迫を避けるなどの方法で症状は軽減することができます。
特に病気というわけではないため、治療の必要はありませんが、見た目の違和感などの美容的な問題や、日常生活での不快感が強い場合には、摘出手術が行われる場合もあります。