乳房に関する症状は、デリケートな問題であると同時に、多くの女性が不安を抱える領域でもあります。乳がんの早期発見が重要である一方で、すべての症状が重大な病気に結びつくわけではありません。
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道では、乳腺専門医が女性の立場に寄り添いながら、正確な診断とわかりやすい説明を心がけています。
気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
乳房にしこりを感じる
乳房に触れるしこりは、女性の多くが一度は経験する症状のひとつです。ホルモンの影響による一時的な腫れや、良性の腫瘍であることが多い一方で、中には乳がんの初期症状として現れることもあります。とくに「月経周期とは関係なくしこりが続く」「徐々に大きくなってきている」「硬くて動きにくい」「しこりの輪郭がはっきりしている」などの特徴がある場合は注意が必要です。
ご自身で気になるしこりに気づいたとき、まずは早めの検査で安心を得ることが大切です。自己判断で放置せず、専門医の診察を受けることをおすすめします。
考えられる疾患
乳房に痛みがある(乳房痛)
乳房の痛みは、月経前後に起こるホルモンの変動によってよくみられる症状です。
このような周期的な痛みは、通常は心配のないものですが、左右差があったり、月経とは関係のないタイミングで持続する痛み、発赤や腫れを伴う痛みなどがある場合は、乳腺炎やその他の疾患の可能性があります。
「片側だけが痛い」「触ると熱をもっている」「赤みが出ている」「授乳期ではないのに痛む」といった場合は、一度診察を受けることをおすすめします。
考えられる疾患
乳頭から分泌液が出る
乳頭から分泌液が出る症状には、ホルモンのバランス変化や、乳管に起こる炎症、感染、腫瘍などさまざまな原因が考えられます。左右の乳頭から透明または乳白色、黄色の液体が出る原因は、ホルモンの異常、あるいは薬の副作用などがあり、心配のないケースもあります。
とくに断乳後は数年、絞ると分泌がでることもあります。多くは生理的な現象であることが多いですが、今までなかった分泌が発生した場合は病気が隠れている場合もありますので受診して原因確認が必要です。
また特に注意が必要なのは、片側の乳頭から、血液が混じったような赤や茶褐色の分泌液が繰り返し出る場合です。とくに、同じ乳管の開口部から何度も同じ性状の液体が出る場合は、乳管内に何らかの異常(良性あるいは悪性の腫瘍)がある可能性があるため、早めに乳腺専門医の診察を受けることをおすすめします。
考えられる疾患
- 乳管内乳頭腫
乳管内にできる良性の腫瘍で、血の混じった分泌物が出ることがあります。早期に発見すれば日帰りの手術で対応できることが多いです。 - 乳管拡張症
乳管が広がり、古い分泌物や炎症が原因で分泌液が出ることがあります。異常ではなく閉経後などに生じる傾向があります。 - 乳がん(乳管がん)
特に乳管内に発生する乳がんでは、血性分泌やしこりを伴うことがあります。自覚症状が少ない場合でも、血液混じりの分泌液が唯一のサインになることもあるため注意が必要です。 - 高プロラクチン血症
プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)が授乳期以外に高くなる状態です。不妊や生理不順や無月経などの症状を伴うこともあり、両側乳頭からの分泌の原因となります。
薬物の副作用、抗うつ剤や高血圧、胃薬など様々な薬の副作用で乳頭分泌が起きることがあります。 - 乳腺症(乳腺のう胞)
女性ホルモンの働きで乳腺のはれやむくみが起きる状態で、乳腺のう胞により分泌が起きることもあります。病的な異常ではありません。
乳房や乳頭の皮膚がただれる・かゆい
乳頭や乳房の皮膚がかゆくなったり、赤くなったり、湿疹のような症状が現れる場合、多くは接触性皮膚炎や湿疹などの皮膚トラブルが原因です。
ただし、片側に限って症状が続く場合や、乳頭の変形やかゆみや痛みのないびらんや潰瘍を伴う場合、治療をしても改善しない場合には、まれに乳がんの一種である「パジェット病」が隠れていることがあります。
「乳頭のただれがなかなか治らない」「一部の皮膚だけが繰り返し赤くなる」などの症状がある場合は、皮膚科的治療でなく、乳腺科での精査が望ましいこともあります。
考えられる疾患
- 乳頭湿疹・接触性皮膚炎
下着の刺激や石鹸などが原因で、乳頭や乳輪に赤みやかゆみが出ることがあります。 - パジェット病(乳がんの一種)
乳頭やその周囲の皮膚に湿疹のような変化が起こる稀な乳がんのタイプです。治りにくい皮膚症状が特徴です。
乳房の形や大きさの変化に気づいた
鏡でふと見たときに、「片方の乳房だけ大きくなっている」「左右で形が違う」「乳房の皮膚がくぼんで見える」といった変化に気づくことがあります。
これらの症状は、ホルモンバランスの変化によるものや、乳腺の構造的な差に起因することもありますが、しこりによる皮膚のひきつれや乳がんの初期症状として現れることもあります。
変化が徐々に進行している、片側だけが明らかに違ってきた、皮膚が引っ張られるようにくぼんでいるなどの症状があれば、できるだけ早めの診察をおすすめします。
考えられる疾患
脇の下にしこり・腫れを感じる
脇の下に違和感やしこりを感じることがあります。リンパ節の反応性の腫れや、皮膚にできる良性のしこり(粉瘤など)による炎症など一時的なものも多いですが、乳腺からの腫瘍がリンパ節に波及している場合や、脇の下に存在する「副乳」が原因で症状が出ることもあります。
「触れるとしこりがあり、痛みはない」「同じ場所に長期間しこりがある」「乳房と同時に症状がある」といった場合は、乳腺の病変やリンパ節の異常の可能性もあるため、専門的な評価をおすすめします。
- 反応性リンパ節腫脹
腕や手、爪、乳房などのけがや虫刺され、やけどなどにより、また、アトピー性湿疹、リウマチなどの慢性関節炎、骨折ややけどなどの怪我に伴って一時的にリンパ節が腫れることがあります。
予防接種後に接種をした方の手のわきのリンパ節が一時的に腫れることもあります。通常は炎症やけが湿疹が治ると自然にリンパ節の腫れも消失します。 - 副乳の腫れ
乳房とは別に脇の下などにある正常の乳腺(副乳)がホルモンの影響で腫れることがあります。 - 乳がんのリンパ節転移
乳がんが進行すると、脇の下のリンパ節に転移することがあり、しこりとして触れることがあります。 - 全身疾患の症状としてのリンパ節腫大
膠原病や、リンパ腫などの血液疾患などでわきのリンパ節が腫れることがあります。原疾患の治癒に伴いリンパ節の腫れも改善します。